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1.目地の種類とシーリング材の必要性能

目地区分 ムーブメントの種類 主な目地の種類 シーリング材に要求される主な性能 備考
ワーキングジョイント 温度変化による部材の熱伸縮
(温度ムーブメント)
●金属カーテンウォール各種目地
●外装パネル目地
・アルミパネル目地
・塗装鋼板目地
・ホーロー鋼板目地
●金属製建具目地
・サッシ回り目地
・水切り・皿板目地
●金属製笠木目地
●伸縮繰返し挙動への追従性
●硬化途中、硬化後の動暴露性能
●各種金属処理面への接着性
●耐熱・耐候性
●JIS耐久性区分9030以上の性能
2面接着
地震による層間変位
(層間変位ムーブメント)
●PCaカーテンウォール各種目地
・PCaパネル間目地
●ALCスライド構法ユニット間目地
●ALCロッキング構法ユニット間目地
●ALCアンカー構法ユニット間目地
●PCa笠木目地
●GRC・押出成形セメント板目地
●層間変位時のせん断変形および伸縮への追従性
●各種被着体とコンクリートへの接着性
●目地周辺の非汚染性・耐候性
●JIS耐久性区分8020以上の性能
風による部材のたわみ ●ガラス回り目地
●ガラススクリーン目地
●ガラス透過紫外線に対する耐光接着性
●各種金属・ガラスへの接着性
●ガラススクリーンは高い接着強度のもの
部材の含有水分の変化による変形
(湿気ムーブメント/硬化収縮ムーブメント)
●セメント系ボード類目地
・窯業系サイディング目地
・スレート・ケイカル板目地
・押出成形セメント板目地
●ボード収縮による長期引張への対応性能(応力緩和性)
●含水状態での接着性
●JIS耐久性区分8020以上の性能
ノンワーキングジョイント   ●コンクリート壁各種目地
・RC造のサッシ回り目地
・湿式石張り、タイル張り目地
・RC造の打継ぎ目地
・RC造の亀裂誘発(収縮)目地
●PCa壁式構造の目地
●PCa板の打込みサッシ回り目地
●ALCボルト止め構法のパネル目地
●後塗装性(密着性・塗料非汚染性)
●非汚染・耐候性
●含水状態での接着性
主に3面接着
ワーキングジョイント:目地のムーブメントが比較的大きい目地
ノンワーキングジョイント:ムーブメントが小さいかほとんどムーブメントを生じない目地

2.目地寸法の設計

1 ワーキングジョイントの目地設計

目地の動きの算定
(1)温度による目地の動き

●バットジョイント(突付け目地)の場合
バットジョイントでは、温度変化ムーブメントδtは部材の拘束、端部拘束および面外変形による逃げを考慮すると(2.1)式で算定でき、その向きは引張り・圧縮方向となります。

(2.1)式

ここに、
δt:温度ムーブメント(mm)
α:部材の線膨張係数(/℃) ・・・表(2.1)参照
ℓ:部材の設計長さ(mm)
⊿T:部材の実効温度差(℃) ・・・表(2.2)参照
Kt:温度ムーブメントの低減率 ・・・表(2.3)参照

●ガラス回り目地の場合
ガラス回りの目地のムーブメントは(2.2)式で算定でき、その向きはせん断方向となります。なお、安全性を考慮して低減率を含まない算定式を用います。

高さ方向

幅方向

コーナー部
(2.2)式

ここに、 δt:温度ムーブメント(mm)
δh・δw:高さ方向・幅方向のムーブメント(mm)
αs、αg:サッシおよびガラスの線膨張係数(/℃)・・・表(2.1)参照
h、w:ガラスの高さ・幅(mm)
⊿Ts、⊿Tg:サッシおよびガラスの実効温度差(℃)・・・表(2.2)参照

・主な構成部材の線膨張係数αは、表(2.1)の値を目安とする。
・部材の実効温度差⊿Tは、表(2.2)の値を目安として設定する。同表では構成部材表面の色調が明色と暗色の両極端の場合について数値を示したが、実際の色調に応じて中間の数値を用いてもよい。
・温度ムーブメントの低減率Ktは、表(2.3)の値を目安とする。
・過去の実績や経験によりα・⊿T ・Ktが求められている場合、または推定できる場合にはその値を用いてもよい。
(2)層間変位による目地の動き

一般に層間変位ムーブメントは、1ユニットが1パネルで構成されるPCaコンクリートやアルミニウム合金製鋳物のカーテンウォールなどで大きく、その動きは近似的に算出できます。これらのカーテンウォールの取付け方法としてスライド方式、ロッキング方式、および併用方式があり、スライド法では主として横目地に、ロッキング方式では縦目地に、併用方式では両方の目地にムーブメントを生じます。スライドおよびロッキング方式の場合はそれぞれ、(2.3)式、(2.4)式によりムーブメントδh・δwが算出でき、その向きはどちらもせん断方向となります。

スライド方式
(2.3)式

ロッキング方式
(2.4)式

ここに、
δh・δv:横目地・縦目地のムーブメント(mm)
R:層間変位角(rad)
⊿:層間変位(mm)
hp wp:パネルの高さ(または階高)・幅(mm)
Kr:層間変位ムーブメントの低減率 ・・・表(2.4)参照

・層間変位ムーブメントの低減率Krは、表(2.4)の値を目安とする。なお、過去の実績や経験によりが求められている場合はまたはKr推定できる場合には、その値を用いてもよい。
■部材の線膨張係数(α)(×10-6/℃) )表(2.1)
形状 種類 線膨張係数
形材 アルミニウム 23
パネル 金属 アルミニウム板 23
アルミニウム鋳物 23
ステンレス(オーステナイト系) 17
10
コンクリート 10
ALC 7
ガラス 9
■部材の実効温度差(ΔT)(℃) )表(2.2)
形状 構成部材 外壁 笠木
種類 表面の色調※3
形材 アルミニウム 明色 55 65
パネル 暗色 70 80
金属 アルミニウム板 明色 55 65
暗色 70 80
アルミニウム鋳物 明色 50 55
暗色 65 70
ステンレス(オーステナイト系) 明色 55 65
暗色 70 80
明色 55 65
暗色 70 80
コンクリート 明色 35 40
暗色 40 45
ALC 明色 40
暗色 45
ガラス 一般※1 45
特殊※2 55
【注】
※1. 透明板ガラス、熱線反射反射ガラスのクリアタイプ、Low-E複層ガラスのように日射吸収率の比較的小さい板ガラス
※2. 熱線吸収・熱線反射など熱吸収の大きい板ガラス
※3. 明色:金属素地光沢を有するものおよび明度が比較的白色に近いもの
暗色:明度が比較的比較的黒色に近いもの
温度ムーブメントの低減率(Kt)の目安 )表(2.3)
形状 種類 外壁 笠木
形材 アルミニウム 0.2 0.1
パネル 金属 アルミニウム板 0.3 0.1
アルミニウム鋳物 0.2 0.1
ステンレス(オーステナイト系) 0.3 0.1
0.3 0.1
コンクリート 0.1 0.1
ALC 0.1
ガラス 0
■層間変位ムーブメントの低減率(Kr)の目安 )表(2.4)
hp/Wp スライド方式 ロッキング方式
2以上 0.1 0.1
2未満・0.5以上 0.2
0.5未満 0.3
【注】プレキャストコンクリート・カーテンウォールの場合
hp:パネルの高さ
Wp:パネルの幅

設計目地幅の算定

ワーキングジョイントの場合、シーリング材が予想されるムーブメントに追従するための設計目地幅Wは、(2.5)式によって算出できます。
なお、同式は部材取付けによる目地幅の施工誤差を考慮したものです。

(2.5)式

W:設計目地幅(mm)
δ:ムーブメント(mm)
ε:シーリング材の設計伸縮率・設計せん断変形率(%)表(2.5)参照
We:目地幅の施工誤差(mm)表(2.6)参照

(2.5)式によって求められた設計目地幅は、ムーブメントだけを考慮すれば広いほど安全側にあるといえます。しかし実際には、広すぎると作業上・意匠上・経済性上好ましくなく、逆に狭すぎると耐久性上問題となります。したがって、設計目地幅は表(2.7)の許容範囲内に納めることが必要です。


■シーリング材の設計伸縮率・設計せん断変形率εの標準値(%) 表(2.5)
シーリング材の種類 伸縮 せん断
製品名 記号 M1 ※1 M2 ※2 M1 ※1 M2 ※2
ペンギンシールSR2520New SR-2 20 30 30 60
ペンギンシール2505New/2506防カビ SR-1 (10) (15) (20) (30)
ペンギンシール2510 SR-1 20 30 30 60
ペンギンシールSA7500 SA-2 20 30 30 60
ペンギンシールMS2500 MS-2 20 30 30 60
ペンギンシールMS2570typeNB MS-2 10 15 15 30
ペンギンシールMS2970typeNS MS-2 10 15 15 30
ペンギンシール2550HM/2550LM/2550TypeNB/2570Type1-NB MS-1 10 15 15 30
ペンギンシールPS169N PS-2 10 20 20 40
ペンギンシールPU9000typeNB PU-2 10 20 20 40
ペンギンシールPU979 PUー2 7 10 10 20
ペンギンシール999TypeNB/989TypeNB速攻 PU-1 10 20 20 40
ペンギンシール1250L/1250 AC-1 7 10 10 20
【注】
※1. 温度ムーブメントの場合
※2. 風・地震による層間変位ムーブメントの場合
( )内の数値はガラス回りの場合

■カーテンウォール部材取付時の目地幅の許容差Weの標準値(mm) 表(2.6)
項目 金属製カーテンウォール アルミニウム合金鋳物製カーテンウォール プレキャストコンクリートカーテンウォール
目地幅の許容差 ±3 ±5 ±5

■設計目地幅Wの許容範囲(mm) 表(2.7)
シーリング材の種類 目地幅の許容範囲
主成分 記号 最大値 最小値
シリコーン系 SR 40(25) 10(5)
シリル化アクリレート系 SA 40(25) 10(5)
変成シリコーン系 MS 40 10
ポリサルファイド系 PS 40(25) 10(5)
ポリウレタン系 PU 40 10
アクリル系 AC 20 10
【注】( )内の数値はガラス回りの場合の寸法を示す
目地深さの設定

ワーキングジョイントの目地深さ(シーリング材の厚さ)は目地幅との関係と必要接着面積から決定し、図(2.1)にある許容範囲内に納まるように設定します。

●ワーキングジョイントの目地深さDの許容範囲 図(2.1)
一般目地・土間目地(PU979)の場合
目地深さD(mm)

目地幅W(mm)

1. 土間目地(PU979) 2. 一般目地

グレイジングの場合
目地深さD(mm)

目地幅W(mm)

目地深さの寸法の取り方

角バックアップ材仕上げ面水平の場合

丸バックアップ材仕上げ面水平の場合

丸バックアップ材仕上げ面凹形の場合


2 ノンワーキングジョイントの目地計算

目地幅の設定

ノンワーキングジョイントでは、ムーブメントが小さいので目地幅の算定を行う必要がなく、表(2.8)の許容範囲内に納まるように目地幅を設定します。

目地深さ設定

目地深さは、シーリング材の接着性・耐久性・硬化阻害および施工性などを考慮して表(2.8)の許容範囲内に納まるように設定します。

■ノンワーキングジョイントの目地幅・目地深さの許容範囲(mm) 表(2.8)
シーリング材の種類 目地寸法の許容範囲
最大値 最小値
深さ 深さ
反応硬化2成分形 シリコーン系 40 20 10  10 
シリル化アクリレート系 40 30 10 10
変成シリコーン系 40 30 10 10
ポリサルファイド系 40 30 10  10 
ポリウレタン系 40 20 10 10
湿気硬化1成分形 シリコーン系 40 20 10  10 
変成シリコーン系 40 20 10 10
ポリウレタン系 40 20 10 10
乾燥硬化1成分形 アクリル系 20 15 10 10